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「理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性」読了 [読書メモ]

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
高橋 昌一郎
講談社
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この本、すごいです。タイトルを見ると死ぬほど難しそうに見えて、実際に難しいことが書いてあるんですが、それをあまり感じさせないのがすごい。
この手の哲学とか論理の本って、たいがい数行読んだだけで何を言っているかわからなくなる場合が多いのですが、この本はわからなくなる寸前にちゃんとそれを予期して説明を入れてくれる。具体的には架空の対談形式になっていて、専門家と素人のやりとりという形になっているので、すごく読みやすい。ど素人の僕でもなんとか意味は理解できました。

この本が述べているのは、「アロウの不可能性定理」「ハイゼンベルクの不確定性原理」「ゲーデルの不完全性定理」と、それぞれ「社会科学」「物理」「論理学」と分野は違えど、人間の「理性」がどこまで通用するかをテーマにおいています。
一応物理学科出身なので、「ハイゼンベルクの不確定性原理」については理解があったけれど、「アロウの不可能性定理」「ゲーデルの不完全性定理」については、どこかで名前を聞いたことがあるという程度でした。

「アロウの不可能性定理」でものすごく納得したのが、「多数決」の理不尽さ。小学校の学級会の時から、「多数決で決まったものは正しい」という風に教えこまれてきたけれども、何か違うとみんなどこかで思っていたと思う。その理不尽さを明確に証明しているのがこの章。
そしてさらに衝撃なのが、「公正な決め方」というものが存在しないということをこの定理が証明しているということ。公正に決める、ということがどうがんばっても無理、ということです。
こういうことも知らずに小選挙区制やオリンピックの決選投票なんかについて意見を言ってきたのが恥ずかしいです。どうしてこんな大事なことを学校では教えてくれなかったのか。。民主主義の根本にも関わる重要なことだと思う。

「ハイゼンベルクの不確定性原理」については大体の知識はあったけれども、これまたわかりやすく説明してくれる筆者の力量がすばらしいです。 後半の、「科学の持つ客観性」についての議論も非常に面白い。

そして「ゲーデルの不完全性定理」。これは難しい!簡単に概要を説明するのも難しいけれど、「あるシステムの中で、そのシステムの仕組みでは証明できないことが存在する」ということを証明してしまった論理らしいです。例を挙げると、「私は嘘つきである。」という文章で、自己矛盾を含んでしまうからです。これが、ほとんど全ての体系(数学を含む)に対して成り立つので、厳密に何もかも証明できると思われていた数学でさえも、決定不可能なことが存在することを証明しています。
ということは、人間は自分自身のこと完全に理解することはできない、ということになりますね!?

そしてこの3つに共通するのが「理性」に理論的な限界があるということ。「人間の可能性は無限」ではなかったわけですね!
久々に知的興奮を覚える本でした(中学生のときにブルーバックスなんかの相対性理論の本を読んで衝撃を受けた感じw)。おすすめです!
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kasokage

配送無料も相まって、光の速さでクリックした(笑)
by kasokage (2010-01-14 13:47) 

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